白髪と梨
私は昔から白髪が多かった。多過ぎて抜毛症を発症したことがある。それと中学生くらいの頃に同級生からブチブチ抜かれたことが一回あった。その時私は人前での声の出し方が分からず、上擦ったような声しか出なかった。どちらも徹底的に同級生には馬鹿にされた。そんなことも同時に思い出した。何がって昔はこの白髪が大の苦手だった。後ろ指を指され、場合によっては抜かれるからだった。 そんなわけで昨日風呂に入ったら白髪がやたらと増えていることに気がついて、あ、と気づきの声が出ないことに気づいて、過去のことを思い出して、ドミノが一周し、今に至る。 今、私は自分の白髪が好きだ。数年前にメッシュみたいだと褒められてから誇りに思っている。この白は私の特徴の一部でもあり、高校の頃が最盛期だった。最近になって再び目立ち始めたので、身体が若くなったのかなと考えている。決して身軽ではなく、飛べもしないこの身体だが。 白といえば私の所属するF.PRiNCESSでのイメージカラーは白だ。これは私が決めたものではなく、決めてもらったもの。当時送った写真で来ていた白衣の色なのだ。私は特段それに対して異議を申し立てたりは全くしなかった。簡単なことは人に任せた方が良い。逆に難しいことは自分で考えるべきだと思うが、反応を見て対処をするのは主となる人間の義務だとか、このままでは難しいことを言い出しそうなので省略する。 イメージカラーは白。実際着る服も白が含まれているものが多いので妥当だ。だけれど私の性格は白とは程遠いと思う。白衣と聞いて真っ白だと思った人も多いと思うが、あの白衣の背中と袖は真っ赤に塗ってある。あの色の方が性格的には合ってるんじゃなかろうか。赤は滅多に着ないが、取り入れることはある。金色や赤などの派手な色を、イヤリングに取り入れるのが私はとても好きで、なんだか自分の奥深くにある魅力や暴力的な何かを引き出してくれる気がするのだ。 私は一度着たキャラクターの衣装は着ないことを統一している。統一していた。心に決めた。このルールを破ろうとしたことがきっかけで、人間関係が破滅したことがあるからだ。だから私の手で生まれ出たキャラクターは、一度平面上から出たら徹底的に殺される。それは原作者の私を守る為だとも、彼らは私の分身で、彼らに映した自分の一部分を殺すために生み出しているとも言えるかもしれない。実際捨ててしまった服もあったりする。でもこの白衣だけは、捨てることが出来ていない。不思議なことにそういった片付けの時に決まってこの白衣が見つからないことがあるからで、なんでか分からないがキャラクターが逃げている気もするのだ。この白衣のキャラクターはそういえば逃亡犯だ。彼女らに意思があるかどうかはともかく、服がキャラクターの定めを継いだように思える。 そんなことをいつも考えている。気がする、から何かを一転させてしまうのは私の悪い癖だ。 今日も今日とて、何故果物を買ったのであろうと今になっても考えている。赤いリンゴと、大好物のマスカット。そして自分の顔ほどの大きな梨。梨は明日あたり食べてみようかと思う。